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縣居通信


【縣居通信1月】
賀茂真淵と香道 ~真淵と香道のつながりは?~
みなさんは「香道」をご存じですか? 香道とは・・・
一定の作法に基づいて香木をたき、その香りを聞き味わう日本の伝統芸能です。茶道や華道と同時期の華やかな東山文化(室町時代)のもとに成立しました。

 実はこの「香道」は、賀茂真淵と深いつながりがあります。江戸時代に香道を広めた菆香舎春竜(すきょうしゃしゅんりゅう)は、賀茂真淵の門人だったのです。賀茂真淵の『門人録』には、宝暦12(1762)年9月22日付で正式に真淵門下に入門したことが記されています。また真淵も香合の会に参加をしている記録が残っています。
 ではなぜ、春竜が真淵の門人になったのでしょうか。その理由は、香道において用いる香木名や香合(こうあわせ)に必要な和歌・和文の教養を高めるため、また、自身の門人から正伝ではないと批判された長崎経由の香道の不備を補う方策を模索するためでした。真淵の門人となった春竜は、香道の伝授、考察の内容を筆録し遺すこと、文献による故実の探求、さらには香の世界で師から伝授したものだけでなく故実に基づきつつ新しい方法を伝授することなどを学びました。賀茂真淵も香合の会に参加していて、明和4年1月の香合の会の様子が、真淵の手によって記録され『賀茂翁家集』に残されています。この会においては、真淵の著述があり、また春竜らに講義していたであろう万葉集、古今集、源氏物語、うつぼ物語などが香名の出典となっています。
 賀茂真淵の門人には、既にみなさんご存知の『古事記伝』を著した本居宣長、『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』で有名な塙保己一(はなわほきいち)やエレキテルで名を残し、さらには様々な分野で才能を発揮した平賀源内(ひらがげんない)もいます。これらのことから、江戸で賀茂真淵の名声がいかに広まっていたかがよく分かります。