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縣居通信


【縣居通信9月】
賀茂真淵記念館 収蔵品紹介
~国学への情熱が見てとれる賀茂真淵画像 『賀茂真淵翁旦山模』~

 まだ写真のなかった時代の人を偲(しの)ぶのに、その人の画像に接するという方法があります。多くの人々に師として慕われた真淵には、多くの画像(絵画)が残っています。賀茂真淵翁百五十年祭記念展覧会で12種の画像が集まったという話も伝わっています。偉い人には、多くの肖像があります。同じ人だったら、同じ顔付きでよさそうですが、そうでないのは、なぜでしょうか。
 それは、生きている時の肖像(寿像)と没後の肖像とで違いが出るでしょうし、また、同じ直弟子(じきでし)のものでも、その人のどこに感銘を受けたか、そのとらえ方や印象によっても異なって来るのではないでしょうか。

 真淵画像は、三つにグループ分けできます。
 ひとつは、土佐派の画家で徳川幕府の画所(えどころ)であった住(すみ)吉広(よしひろ)行(ゆき)筆のもので、江戸の賀茂家・浜松の岡部家などに伝えられたもので、『手本貼り賀茂真淵画像』があります。もうひとつは、直弟子の橘千蔭・内山真龍が描いたものです。そして三つ目は、円山応震(まるやまおうしん)が描いたもの。応震は、円山応挙(おうきょ)の孫で、山水花鳥をよくしたと言われています。

 『賀茂真淵翁旦山模』は、この応震のものを、松阪市の画家落合(おちあい)旦山(たんざん)が模写したものです。
 当館を代表する真淵画像であり、ホームページや当館のパンフレットにも掲載されている『手本貼り賀茂真淵画像』が有名ですが、その他にも当記念館にはレプリカを含めて全部で10の真淵画像が収蔵されています。今回紹介するのは『賀茂真淵翁旦山模』です。褪せることのない鮮やかな色遣いで描かれたこの肖像画では、国学の研究に打ち込んでいる真淵の強い志が見てとれます。『手本貼り賀茂真淵画像』での穏やかで優しい眼差しの真淵とはまた違った真淵像が描かれています。

『賀茂真淵翁旦山模』は現在開催中の、令和2年度平常展「賀茂真淵と近世国学者の国語研究」[前期5月28日(木)~9月27日(日)、後期11月27日(金)~令和3年5月23日(日)]で公開中です。ぜひ、実物をご覧いただき国学の研究に勤しんでいた頃の真淵翁の姿を偲んでいただけたらと思います。