【縣居通信3月】
浜松市浜名区三ヶ日町初生衣神社 ~本居宣長や内山真龍から伝わる~
私たちの生活とは切っても切り離せない衣食住の中の“衣”について、機織りの神様を奉る神社として浜松市浜名区三ヶ日町に「初生衣神社」があります。
この神社は、天棚機媛命(アメノタナバタヒメノミコト)をご祭神として祀られています。そうです。七夕の織姫様です。
この浜名の地は、伊勢神宮の神領(神社の所有地)であり、800年を超える長い間、伊勢神宮に神御衣を納めてきました。
この「初生衣神社」のことが、本居宣長によってまとめられた随筆集『玉勝間』に記されています。『玉勝間』は十四の巻まであり、宣長が古典研究で学んだこと、有職故実や語源についての考え、談話など、様々な内容が書かれ、中でも賀茂真淵についての事柄も記されています。
さて「初生衣神社」については「十三の巻 おもひ草 四十七 遠江国より大神宮に神御衣を織りて奉る事」として書かれています。
「遠江国人、内山真竜がいへるは、・・・」で始まり、「・・かの国の浜名郡神戸郷岡本村といふに、機殿有て、年毎に、四月と九月と、神御衣をおりて、伊勢内宮に奉る、そのはた殿は、かの村に、神氏目大夫といふ者、世々相伝へて、としごとに新しく造る、茅葺の屋也、神庫もあり、ふるめきたるつくりざまなり、神御衣は、年ごとに、三河国の大野村といふより、生糸を、此岡本村におくり奉るを、件の機殿にて織りて奉る、和たへ也、と云き、」(『本居宣長』 日本思想体系 岩波書店P427より)となっています。
文の中にある「機殿」は右写真の一番手前の建物になります。昭和44年に三ヶ日町、平成19年に浜松市指定有形民俗文化財に指定されています。その向こうが本殿で、伊勢神宮が昭和48(1973)年第60回神宮司記念遷宮の古材において造営されたものだそうです。
「令和の大造営・御鎮座870年記念事業」として浜松市の助成も受けながら、「機殿」は新しくなり、さらに後世に伝えられる姿を見せています。
町の人々や繊維関係の人々をはじめ、多くの人々が今も大事にしているこの神社は、内山真龍の『遠江国風土記伝』に神戸郷岡本は「・・・伊勢神明(ノ)初生衣領也.有(二)機殿(一)・・・」と書かれ、本居宣長の「玉勝間」にも上記のように記録されていることが、今も、そしてこの後にもつなげていく大切なものであるという意識をもって見つめていく必要があると感じます。
