【縣居通信2月】
賀茂真淵の偉大な業績 ~数多くの著作を残した賀茂真淵~
40歳を過ぎてから江戸に出て田安宗武公に認められ、和学御用を勤めることで名を挙げ数々の業績を残した賀茂真淵ですが、亡くなるまでに数多くの著作を残しています。これまでに分かっている賀茂真淵の著作物は下記のように分類されています。
紀行文などのその他の分野を含めるとその総数は、合計137部、381巻にも及びます。特に歌文集や『古今集』「百人一首」に関する著作が数多く残されています。
ここでその著作の一部を、成立年、主な内容とともに紹介します。
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『冠辞考(かんじこう)』 宝暦7年(1757) 真淵61歳
〝あまづたふ〟(「日」「入り日」などにかかる)などの326の冠辞(枕詞のこと)を、五十音順に並べ、『万葉集』などの用例や語源などを述べた語学書。真淵の代表的著作。
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『万葉考(まんようこう)』 宝暦10年(1760) 真淵64歳
総論で『万葉集』の時代区分や歌人などを論じ、巻1・2・11・12・13・14の6巻が『万葉集』の原形であるとして、これに注釈を施した『万葉集』の注釈書。なお、全20巻のうち残りの14巻については、のちに真淵の草稿本をもとに狛(こま)諸成(もろなり) が完成させました。
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『歌意考(かいこう)』 明和元年(1764) 真淵68歳
上代の歌の価値と復古の要、万葉習学の勧め、『万葉集』と『古今集』との学びの三つに分けられていて、和歌の本質や理想、古風古学の意義、その学習の方法などが書かれた歌論書。
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『国意考(こくいこう)』 明和2年(1765) 真淵69歳
真淵の理想とした古道思想について体系的に説き、儒教や仏教に批判を加え、真淵が理想とする古道を説いた思想書。
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『語意考(ごいこう)』 明和6年(1769) 真淵73歳
総説と活用論など三つの部分から成っていて、五十音図を基礎にして、国語の音韻・語法などを説いた語学書。真淵の国語研究は、門人たちに継承され深められ、近代に入り古典文法の確立につながっていきました。
